歯茎は意外と鈍感で、腫れていても歯ブラシで磨いたりしない限り痛みはありません。
歯周病が「沈黙の病」と言われる所以です。
しかし、口の中が敏感な人は、歯周病の症状として初期の違和感を感じることがあります。 その一つが、歯茎の痒みを訴えることです。
患者さん「歯茎がかゆい」と言われることは「歯茎が痛い」と言われる患者さんよりもずっと少ないです。
しかし日本臨床歯周病学会が作成した「歯周病自己診断」プログラムには歯周病のサインのひとつである「歯ぐきのかゆみ」の項目があり、歯周病のリスクに一つになります。
なぜ歯周病になると歯茎がかゆくなるのか
歯周病は、歯ぐきの炎症です。
歯周病菌が歯と歯ぐきの間に侵入すると、血液中の白血球に集まって白血球を除去し、血管を太くして腫れさせます。
この炎症の症状の1つに「かゆみ」があります。
また、歯周病が進行して歯がぐらつき始めると、かゆみを感じることがあります。
歯がぐらつくと、歯根と歯槽骨の間にある歯根膜を刺激し、かゆみにつながります。
歯根膜は咀嚼の感覚にも影響を与えます。
強い力が加わると、歯が浮くような感覚になり、「かゆい」と言われることもあります。
かゆみには歯周病以外の病気が原因の場合もある
歯科材料による金属アレルギーが原因の場合もあります。歯科の金属アレルギーは銀歯が原因です。
銀歯は、銀、銅、パラジウムなどの金属でできており、唾液と反応して口の中で溶けてしまうことがあります。
溶解する量は非常に少ないので健康的な問題はありませんが、金属アレルギーのある方は、反応として口の中がかゆくなったり、体に発疹が出たりといった症状が出ることがあります。
金属アレルギーが疑われる場合は、疑わしい物質を含むパッチテストを皮膚科にて行います。
検査結果が陽性であれば、金属を除去して非金属の詰め物や被せ物(セラミックなど)に置き換えることで問題を解決することができます(歯の位置によっては治療費が自己負担になる場合があります)。
最近では、最初から金属アレルギーを懸念して、自費でセラミックなどの素材を選ぶ人も増えてきました。
歯がかゆくなる主な7つの原因
上記ではかゆみに対する主な3つの理由をあげましたが、確認と他の理由を7つにまとめました。
1)「歯周病」
歯周病になると、歯茎がかゆくなります。
これは、歯と歯ぐきの間のいわゆる「歯周ポケット」に歯石や歯垢がたまり、歯ぐきに炎症が起こるためです。
歯周病が進行すると、歯周組織が破壊され、歯を失うことになります。
40歳以上の日本人の8割が歯周病にかかっていると言われています。
2)「虫歯」
虫歯において、神経(歯髄)まで虫歯が進行すると、痒くなります。
この場合、歯髄炎は麻酔をかけて抜髄させなければならないことが多いです。
歯を削って、根管内の細菌を洗浄し、きれいにする必要があります。
3)「噴出性歯周炎(6~15歳頃)」
乳歯から永久歯が生えてきて、歯茎に生えてくると痒くなります。
歯が順調に育っていれば、かゆみは治まります。
成長の過程だと思ってください。
4)「親知らず(智歯)」
親知らずは第三大臼歯とも呼ばれ、前歯の真ん中から8番目の歯です。
親知らずが斜めに生えてくると、歯茎が腫れることがあります。
その理由は、歯や歯茎に食べ物が入り込み、汚れてしまうからです。
また、横に伸びると、歯の並びに影響することもあります。
5)「歯ぎしり」
歯を食いしばると、自分の体重と同じだけの力がかかると言われています。
強く歯ぎしりや食いしばりをすると、歯周組織の歯根膜が炎症を起こし、かゆみを感じます。
この状態が続くと、歯が折れたり割れたりすることがあります。
対策としては、歯や顎関節を守るためにマウスピースを入れることが望ましいです。
6)「ストレスや体調不良」
忙しいとき、睡眠不足のとき、疲れているとき、風邪をひいているときなどは、免疫力が低下して細菌に感染しやすくなるため、歯のかゆみが起こります。
7)「アレルギー」
食物アレルギーでは、りんご、さくらんぼ、ナッツ、野菜などを食べると、歯茎や頬の粘膜が腫れたり、しびれたりすることがあります。
この場合、原因と思われるものを回避することで問題は解決します。
金属アレルギーの場合は、まず大学病院などでアレルギー反応を起こしている金属の種類を調べ、口の中の金属を取り除き(ほとんどが保険診療)、その後金属を使わないセラミックなどに交換します。
以上のように、考えられる原因を7つ挙げましたが、まず大切なのは毎日の自宅での丁寧なブラッシングと、歯科医院での定期検診(歯石除去を含む)です。
歯医者に行かない期間が長ければ長いほど、将来的に治療にかかる時間とお金が増えていきます。
歯のかゆみへのセルフケア
歯がかゆい場合、自宅でできることをご紹介します。
刺激の強い食べ物や飲み物を避ける
口の中が痛いときに刺激の強い食べ物や飲み物を避けることは、なんとなく行っていると思います。
キムチなどのスパイシーな食べ物、カレーやエスニック料理などの刺激的な食べ物、柑橘類などの果物を避けましょう。
オレンジジュースやグレープフルーツジュースも、口内炎がある場合は刺激になります。
口の中を清潔に保つ
歯茎がかゆいと、歯磨きの際にかゆみが増すのではないかと心配になりますよね。
しかし、口の中の細菌が増えれば増えるほど、口の中が炎症を起こし、感染症にかかりやすくなります。
口の中をできるだけきれいにしておくことが大切です。
口の中をできるだけ清潔に保つことが大切ですが、アルコールなどの刺激物を含むマウスウォッシュはかゆみや痛みにつながることもあるので、刺激の少ないものを使いましょう。
市販のクリームを塗る
薬局では口内炎用のクリームやパッチが販売されています。これはかゆみを抑えるので家に置いておくといいでしょう。
夜間にかゆみがあり、気になって眠れないという方は、まずは市販の軟膏を塗って様子を見てみてください。
ティッシュで口をすすぎ、清潔な手や綿棒で軟膏をかゆみや痛みのある部分に塗ります。
軟膏が剥がれてしまうので、その後40分程度は飲食をしない方が良いです。
歯茎の腫れや痛みで歯科医院に行かなければならない症状
歯茎のかゆみがある場合は、一度歯科で検診を受けてみてください。
上記のように歯茎のかゆみには主に原因は7つありますが、いずれも歯科医院で治療することができます。
歯周病、特に根尖性歯周炎の場合、かゆみが消えたように見えても、治療しなければ自然には治りません。
歯根破折や歯根周囲炎の場合は、破折した歯や感染源となっている親知らずを抜歯することが基本的な治療となります。
抜歯なんて大げさなと思われるかもしれませんが、感染源となる弱った歯を除去したり、清掃の行き届いていない歯を除去することで、口腔衛生を改善することができます。
場合によっては、歯周病で歯が動いてしまったり、クラウンがうまく装着できずに治療が必要になることもあります。
口内炎や火傷は、数日以内に痛みが消えれば歯科医院に行く必要はないかもしれませんが、食生活に気をつけ、バランスのとれた食事と十分な睡眠をとることが大切です。
まとめ
歯茎のかゆみといえば、歯周病を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
歯周病や歯根膜炎、歯根破折と同様に、歯周病の炎症も原因となります。
また、口内炎や火傷、食生活の乱れや睡眠不足など、生活習慣に起因する原因がある場合もあります。
仕事や勉強で歯医者に行けない方は、歯茎の痛みに気をつけたいと思いますが、虫歯のケアだけでなく、歯茎の状態を定期的にチェックしてみてはいかがでしょうか。
かゆみのない健康な歯ぐきは、お口の健康にとって重要です。